むくみ(浮腫)

むくみ(浮腫)とは

むくみは、医学的には浮腫(ふしゅ)と呼ばれ、皮下組織に水分が溜まっている状態です。塩分の過剰摂取や同じ姿勢を長時間続けることによって引き起こされることがありますが、潜在的な疾患の症状として現れることもあります。心不全などの重篤な病気のサインとしてむくみが現れることがあります。むくみが続く場合には、早めに医師にご相談ください。

むくみ(浮腫)の症状

以下の症状が長期間続いている方は、早めに医師にご相談ください。

など

むくみ(浮腫)の原因

むくみは、心臓や腎臓などの疾患によって引き起こされることがあります。
また、食生活を含む生活習慣などの要因によって生じる場合もあります。

心臓の障害

心臓の機能が低下し、心不全が発生すると、心臓のポンプ機能が弱まり、全身へ十分な血液を供給できなくなると同時に、心臓に血液が戻りにくくなります。そのため血液が組織に滞留し、むくみが生じることがあります。
この状態は、さまざまな心臓疾患によって引き起こされます。

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肝臓の障害

肝臓の障害が進行して肝硬変という状態になると、肝臓でアルブミンというタンパク質の合成が低下します。アルブミンは血管内の水分調整に関与し、血管に水分を保つための浸透圧を調節する役割を果たしています。アルブミンの量が減少すると、血管に水分を保つことができなくなり、むくみが生じる可能性があります。

腎臓の障害

腎臓は水分や余分な物質を尿として排出する機能を持っています。腎臓の機能が障害されて腎不全という状態になると、腎臓から水分や塩分をうまく排出できなくなり全身に水分が貯留してむくみを生じることがあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症によるむくみのメカニズムは、一般的なむくみとは異なります。体内の代謝が遅くなることで、組織間に「粘性のあるむくみ」が生じるのが特徴的です。
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、体内のエネルギー消費が減少します。これにより、体内のタンパク質や脂質の代謝が遅くなります。特に、一部の糖タンパク質(ムコ多糖類)の代謝が遅れると、その結果として体の組織間に溜まってしまいます。
ムコ多糖類は水を吸収する特性があり、体の組織間に蓄積されると、それが水分を吸収し膨らむため浮腫が生じます。この浮腫は特に顔や四肢に現れやすく、指で押すと形がすぐには元に戻らないのが特徴的です。

リンパのむくみ

リンパ液の流れが滞ることによって、四肢にむくみが生じることがあります。この状態はリンパ管の障害によるもので、がんの手術後に特によくみられます。手術後すぐにむくみが現れることもありますが、術後10年以上経過してから突然むくみが生じる場合もあります。

下肢静脈瘤

ふくらはぎの筋肉は第二の心臓のようなポンプとして機能の担っており、足に到達した血液は、ふくらはぎの筋肉によって重力に逆らって遠い心臓まで戻されます。
足の静脈には静脈弁が存在し、血液の逆流を防ぐ役割を果たしています。しかし、静脈弁が損傷し血液が十分に戻せなくなると、弁の機能不全が生じます。
血液が溜まり、静脈血管が瘤状に膨れた状態が下肢静脈瘤で、細いクモの巣のように見えるタイプもあります。

深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)

長時間座ったままでいるなど、同じ姿勢を長時間続けることで、足の静脈に血栓が形成されるリスクが高まります。血栓が形成されると、血液が心臓に戻りにくくなって足がむくみます。
また、血栓は血流に乗って肺の血管を詰まらせる肺塞栓症を引き起こす可能性もあり、肺塞栓症は命に関わる危険性があります。

薬剤によるむくみ

 

薬剤の副作用としてむくみを生じることがあります。特に高血圧治療薬のアムロジピンによる浮腫にはよく遭遇します。

生活習慣が関わるむくみ

同じ姿勢で長時間過ごす

ふくらはぎは足に溜まった血液を重力に逆らって心臓に戻すポンプのような役割を担っているので、立ち仕事やデスクワーク、飛行機やバスの移動など、長時間同じ姿勢でいると、ふくらはぎの動きが減少します。
ふくらはぎの動きが減少すると、足に血液が滞留するため、むくみが生じる可能性があります。さらに、下肢静脈瘤のリスクを高める要因にもなります。

運動不足・過度なダイエットによる筋力の低下

ふくらはぎの筋力が低下すると、足の血液を心臓に戻す機能が十分に果たせなくなり、むくみが生じます。

過剰な塩分摂取

過剰に塩分を摂取すると、体内の塩分濃度を薄めるために大量の水分を摂ってしまい、むくみに繋がります。 また、塩分は水分を保持する性質があるため、体内の余分な水分が排出されにくくなり、さらにむくみを悪化させる可能性があります。

過剰なアルコール摂取

アルコールには血管内を脱水させる作用があり、体内の水分が減少し血液濃度が上昇します。この状態を解消するため、体は血管内に水分を取り込もうとしますが、この水分がむくみの原因となることがあります。

むくみ(浮腫)の検査

血液検査

腎機能や肝機能、アルブミン値、甲状腺ホルモンなどを確認することができます。
NT-proBNPという心不全のマーカーを確認します。
D-ダイマーという血栓のマーカーにより、静脈血栓の有無も確認できます。

尿検査

腎機能の障害が進むと、尿中にアルブミンが現れるため、アルブミンが現れていないか確認します。

胸部X線検査

心臓のサイズを確認し、心拡大の有無を確認します。同時に肺にうっ血が生じていないか、胸に水が溜まっていないかを確認することができます。

心臓超音波検査

 

心臓の大きさ、動き、形状などを調べ、心不全の原因を確かめます。
また、血管超音波検査により、血流や血栓の有無、血管の肥厚などを確認することが可能です。

むくみ(浮腫)の治療

むくみの原因となっている疾患が特定された場合、それに対する治療を行います。体内に過剰な水分が蓄積し、むくみが生じている場合には、利尿剤などを使用して余分な水分を体外に排出します。また、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善も重要です。

マッサージとストレッチ

ふくらはぎに溜まった血液を心臓へ戻すためには、なでるようなマッサージが有効です。このマッサージは、ふくらはぎの筋肉を刺激して血液の循環を促進し、むくみの改善に役立ちます。また、リンパ液の流れを改善する効果もあります。 ストレッチもふくらはぎの筋肉をほぐし、血流を改善させるのに役立ちます。特に腓腹筋やヒラメ筋などを重点的にストレッチすることで、ふくらはぎの血行を改善することができます。ただし、マッサージやストレッチを行う際に、痛みや違和感がある場合には無理をせずに中止しましょう。

食事

 

塩分の多い食事を避けるようにしましょう。ハム、ソーセージ、干物、漬物、インスタント食品、スナック菓子などは塩分が多く含まれているため、摂取を控えることが重要です。 代わりに新鮮な野菜や果物、低塩分の調味料を積極的に取り入れてバランスの取れた食事を心がけましょう。

運動

デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続ける場合、ふくらはぎの動きが制限されますので、こまめに休憩を取り、少しでも歩くことを心掛けましょう。また、ストレッチも効果的で、 ふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋をストレッチすることで血流を改善できます。 座っている間でも効果的な方法があり、かかとを上げ下げする運動を行うことで、ふくらはぎの血流を改善できます。

弾性ストッキングの使用

ストッキングは足に適度な圧力をかけ、むくみを軽減する効果が期待できます。弁不全がある患者様にも有用で、下肢の静脈血栓の予防にも役立ちます。ただし、正しい方法で着用しないと血行が悪化する可能性もあるため、医師に相談した上で着用するようにしましょう。

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