花粉症とは
花粉症の原因
これらの物質が神経や血管を刺激して異物である花粉を体外へ排出しようと、くしゃみや鼻水、涙などが出ます。去年までは大丈夫だったのに急に花粉症になったという話をよく聞きますが、それはこれまでに蓄積されたIgE抗体が一定の量に達してしまったからだと考えられています。
花粉症の種類
原因となる植物には、スギ・ヒノキ・イネ・ヨモギ・カモガヤ・ブタクサ・シラカンバなどがあります。季節や地域によって異なるため、飛散時期を把握することで早期予防に役立ちます。
全国の森林の18%、国土の12%をスギが占めていることもあり、花粉症の7割はスギ花粉症だと推測されています。関西ではスギと並んでヒノキの植林面積が広いので、ヒノキにも注意が必要です。北海道ではスギやヒノキは少ないですが、シラカンバが多いので、シラカンバの花粉症が多いようです。
花粉症の原因となる植物と
ピーク時期
日本はスギ林が多いため、スギ花粉症の症状が出る春先が話題になることが多いですが、植物の種類によって飛散時期が異なるので、人によって症状の時期が異なります。
スギの場合は1月以降、ヒノキの場合は3月以降、イネの場合は5月〜6月にかけての流行がみられます。
原因となる植物の飛散時期と主な特徴
原因となる植物 | 飛散時期 | 特徴 |
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スギ | 2月~4月 | 花粉症の原因の代表格で本州・四国・九州の山中に分布している |
ヒノキ | 3月~4月 |
スギに似たアレルギー物質を持ち、本州の福島より南の地方と四国・九州に分布する |
カモガヤ | 5月~6月 |
イネ科。海外から輸入された牧草で、寒さに強く雑草として日本全国に広がっている |
オオアワガエリ | 6月~8月 |
イネ科。海外から輸入された牧草で、寒さに強く雑草として日本全国に広がっている |
ススキ | 9月~10月 | イネ科。多年草で1~2mの大きさに達してススキ野原をつくる |
ハンノキ | 1月~4月 | 日本全国に分布していて、森や湖などの湿地に多い |
シラカンバ | 3月下旬~6月 | 北海道や本州の中部より北の地域に分布していて、スギの花粉症がほとんどいない北海道の人に多い |
ブタクサ | 8月~9月 | 日本全国に分布する、秋の花粉症の代表格 |
ヨモギ | 9月~10月 | 日本全国に分布する |
カナムグラ | 8月~10月 | 日本全国に分布し、中でも関東地方に多い |
花粉症の症状は、気象条件によって毎年飛散する時期や飛散量が変動します。関東や東海地方ではスギ花粉症が多く、九州ではヒノキ花粉症が多いという傾向もあります。
東京都内での目安として、以下の飛散時期があります。
- 春:スギ(2月〜4月)、ヒノキ(3月〜5月)
- 秋:ヨモギ(8月〜10月)、ブタクサ(8月〜10月)
また、春から秋にかけては、イネ科の花粉も飛散します。
このように日本全国では、年間を通じて何らかの種類の花粉が飛散しています。
花粉症の症状
花粉症では、鼻や目などに様々な症状が現れます。
目
目がゴロゴロする感覚やかゆみ、涙、充血、目やにといった症状が現れます。
鼻
皮膚
皮膚のざらつきやかゆみなどの症状が現れ、肌が荒れることもあり、「花粉症皮膚炎」とも呼ばれています。
その他の症状
だるさや頭痛、咳、のどのかゆみや痛み、微熱などの症状が現れることもあります。風邪と似たような症状が出る場合は区別が難しくなることもあります。
花粉症と風邪の症状の違い
症状 | 花粉症 | 風邪 |
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目 |
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鼻 |
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のど |
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頭痛 |
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くしゃみ(咳) |
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花粉症の検査
しかしながら通年アレルギー症状がある場合や症状が強い場合、患者様から検査の希望がある場合にはどのアレルゲンが原因かを調べるために血液検査を行い、ヒノキ、ブタクサ、スギなどに対するIgE抗体を測定します。
「VIEW39」というよく見られる原因物質39項目を一度の血液検査で調べられる検査があります。簡便で、保険適応(3割負担)があり5000円程度で実施できます。
花粉症の初期療法
初期療法とは、花粉が飛散する前から内服薬などの治療を開始する方法で、早めに治療を始めることで、花粉シーズン中のつらい症状を軽減し、症状が出る時期を遅らせる効果が見込めます。
お薬の開始時期
お薬を開始する時期は、本格的な花粉の飛散が始まる約2週間前からとなります。例えば、東京都内にお住まいでスギ花粉症の場合、1月中旬から下旬頃から服薬をスタートすることが一般的で、早めの対策が重要とされています。
花粉症の治療法
患者様の症状に応じて適切なお薬を処方します。
内服薬(飲み薬)
症状が強い場合には、抗ヒスタミン薬(ビラノア、デザレックス、ルパフィンなど)の飲み薬を処方します。さらに、ロイコトリエン拮抗薬(キプレスなど)やステロイドの飲み薬(セレスタミンなど)も併用することがあります。
花粉が大量に飛散していると、これまで使用していたお薬だけでは効果が不十分になる場合があります。その際には、一時的により強いお薬に切り替えたり、別のお薬を追加したりすることもあります。
各お薬には効果や眠気のデータがありますが、実際の効き具合や眠気には個人差があります。効果があったお薬や無かったお薬の名前をお薬手帳などに記録しておくと、自分にとって効果的なお薬を把握しやすくなります。
抗ヒスタミン薬
ヒスタミンの働きをブロックして、くしゃみや鼻水、鼻づまりの症状を抑えます。眠気の副作用が多いですが、副作用が軽減された「第2世代抗ヒスタミン薬」が主流です。代表的な薬剤としてビラノア、デザレックス、ルパフィンなどがあります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
アレルギー反応の過程で生じるロイコトリエンの働きを抑えます。ロイコトリエンは鼻の粘膜の血管透過性を高めて鼻づまりの原因となります。そのためロイコトリエン受容体拮抗薬は粘膜が腫れて鼻づまりが強い時に使われます。代表的な薬としてキプレス、オノン、シングレアがあります。
点眼薬(目薬)
目のかゆみが強い場合には、ステロイドや抗ヒスタミン薬の目薬を処方します。 コンタクトレンズの上からは点眼できないため、コンタクトレンズを装着している方は外してから点眼し、しっかりと時間を空けてから再び装着するようにしましょう。
点鼻薬(鼻スプレー)
鼻づまりや鼻水が酷い場合には、血管収縮薬の鼻スプレーやステロイドを追加して使用することがあります。
ただし、鼻水の流れによってお薬がうまく作用しないことがあるため、鼻スプレーを使用する前には鼻をしっかりかんでから利用してください。
レーザー手術
内服薬や点鼻薬を使った治療で十分な効果が得られない、特に鼻づまりがひどい場合はレーザー手術を行うことがあります。鼻粘膜の表面に麻酔をかけて、レーザーで粘膜を焼き、アレルギー反応を抑える治療法です。保険が適用され、片方の鼻で10分程度の一回の治療で終了です。(当院では施行できないため他医療機関をご紹介いたします。)
アレルゲン免疫療法
根治療法として期待されているのがアレルゲン免疫療法で、花粉症の原因物質のアレルゲンを少ない量から取り入れ、徐々に増やしていくことでアレルギー反応が起こらないような体質にしていきます。副作用はほとんどなく、花粉症治療の選択肢として今後さらに普及していくと思われます。
どの科を受診すればいいのか?
眼科、耳鼻科(耳鼻咽喉科)、アレルギー科、内科を受診ください。耳鼻科や内科でも点眼薬の処方が可能です。
花粉症の予防
また、玄関先で服をブラシで丁寧にかけたり、布団や洗濯物を干したらしっかりと叩いたりすることで、家の中に花粉を持ち込まないようにしましょう。
花粉症の注意点
眠気を引き起こしにくい抗ヒスタミン薬を選択することがほとんどですが、眠気の出やすさは個人差があります。
花粉症のお薬を服用することによる眠気が仕事や運転に影響することを心配されている場合は、お気軽にお申し付けください。
花粉症のセルフケア
花粉症には、薬局で購入できる市販薬がたくさんあり、ある程度の効果が期待できます。その多くが抗ヒスタミン薬で、眠気を起こしにくい第2世代の抗ヒスタミン薬も販売されています。また、点鼻薬や点眼液もあり、手軽に花粉症の薬を購入することができます。手軽に購入できますが、薬剤師のいる薬局で、現在服用している薬や症状などを相談して購入することをおすすめします。
花粉症でお困りの方は
当院にご相談ください
花粉症はスギやヒノキなどに対するアレルギー反応で、鼻水・くしゃみ・鼻詰まりといった鼻の症状、目のかゆみ・充血といった目の症状がでる疾患です。花粉症の治療は薬物治療が基本になり、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、点鼻薬・点眼薬などを組み合わせます。最近ではアレルゲン免疫療法がスタンダードな治療になりつつあり、従来の薬物療法ではなかなか効果が得られなかった患者さんに対しても効果が期待されています。
当院の内科では、必要に応じて血液検査でアレルゲンを特定した上で、最適な飲み薬・初期療法・鼻スプレー・目薬による治療を実施しております。また、眠気を引き起こしにくい飲み薬や費用負担の少ないジェネリック医薬品も処方しております。
花粉症は個人によってお薬の効き方や症状の出方に差がありますので、あまり効果の無かったお薬や希望のお薬がある場合は、お薬手帳やメモなどで薬剤名をお伝えください。市販薬や他院で処方されたお薬で効果が不十分だった方は、当院までお気軽にお問い合わせください。なお、当院ではレーザー治療は実施しておりませんので、ご了承ください。