狭心症とは
狭心症の原因
冠動脈に動脈効果がなくても、明け方や早朝に冠動脈が攣縮して狭くなって発症する狭心症を冠攣縮性狭心症といいます。ほとんどの場合、喫煙が主な原因です。
狭心症の症状
狭心症の分類
狭心症は、症状の程度や原因などによっていくつかのタイプに分類されます。
労作性狭心症
いわゆる狭心症といえばこの労作性狭心症を指します。運動などの負荷がかかった時に胸の痛みを引き起こす疾患です。階段や坂道を上がると胸が締め付けられたり、圧迫されたり、痛みが起こりますが、安静にすると数分程度で治まることが多いです。
痛む場所は、みぞおち、前胸部、首、腕、肩などで、奥歯が痛くなる場合もあります。労作時には全身が多くの血液を必要とし心筋の働きが活発になります。冠動脈に狭窄がある場合、心筋への血流が不足するため心筋虚血状態を起こし、狭心症の症状が現れます。症状が起きている時は安静にすることが大切で、腰を下ろして呼吸がしやすいように襟元を緩めるなどの対処が必要です。また、ニトログリセリンの舌下錠やスプレー剤をお持ちの場合には、それを使用することにより症状を軽減できます。狭くなった冠動脈を広げる作用があるニトログリセリンは、心筋虚血の改善に効果的です。ただし、ニトログリセリンは血圧を下げるため、低血圧で倒れて怪我をしないように腰を下ろした状態で使用するようにしましょう。
不安定狭心症
不安定狭心症は、労作性狭心症発作を発症している方がより軽い運動や安静時でも症状が出現するようになったり、新たに症状が現れたりした場合のことを言います。安定狭心症と異なり、休息や薬の服用によっても症状が緩和されない場合があります。
この狭心症は、心筋梗塞の前兆として現れることがあり、急性心筋梗塞とまとめて急性冠症候群と呼ばれます。症状が繰り返し起きることで、冷や汗や強い痛みなどの症状が現れなくても、心筋梗塞状態になってしまうことがあります。命の危険に関わる重大な疾患のため早期の診断と適切な治療が必要です。
冠攣縮性狭心症
微小血管狭心症
微小血管狭心症は冠動脈の狭窄がなく、上記の冠攣縮性狭心症とも違って肉眼的に見える冠動脈の攣縮もないのに、狭心痛が生じる疾患です。これは冠動脈造影検査では写らない微小血管が攣縮することが原因とされています。診断が難しく、現在のところ検査方法が定まっていません。労作に関係なく胸痛を起こすことがあり、他の狭心症と比較すると持続時間が長いとされています。他の狭心症とは異なりニトログリセリンが無効なことが多く、β遮断薬やカルシウム拮抗薬が効果的な治療法とされています。
更年期前後の女性に多くみられますが、これは一酸化窒素(NO)の産生が低下していることが原因と考えられています。更年期前後の女性はエストロゲンというホルモンが減少して、それに伴ってNOの産生が低下します。NOは血小板凝集抑制作用や血管平滑筋の弛緩作用などがあり、これが微小血管狭心症の発症に関係していると考えられています。
狭心症の診断
狭心症の治療
狭心症の治療には薬物療法と手術療法があります。
薬物療法
手術療法
狭心症の進行度が高い場合や、生活習慣改善や薬物療法によって十分な効果が得られない場合には、カテーテル・インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス移植術(CABG)などの手術的治療が行われることがあります。
カテーテル・インターベンション(PCI)
カテーテル・インターベンション(PCI)は、細い管状のカテーテルを使用した治療法です。カテーテルを介して通したガイドワイヤーを頼りに、狭窄部分までバルーン(風船)を運んで膨らませ、内側から押し広げます。その後必要に応じて、ステントと呼ばれる管状の金属装具を挿入して留置して血管を拡張し、再び血管が狭くならないようにします。ステント治療は現在では広く普及しています。ステントを用いない場合、再狭窄予防の薬剤が塗布された薬剤溶出性ステントが用いられることもあります。カテーテル・インターベンションは局所麻酔で行えるため全身麻酔のようなリスクがなく、時間も1〜2時間程度で終わることがほとんどです。
冠動脈バイパス移植術(CABG)
外科的に胸部を開き、狭窄した血管の先に、他の血管を繋いで血液の流れを作り、狭窄部を迂回して血流の流れを改善する手術を冠動脈バイパス移植術(CABG)と言います。胸骨の裏にある内胸動脈や足の静脈である大伏在静脈、胃に血液を送る右大網動脈や腕の橈骨動脈などが迂回路の血管として使われます。カテーテル・インターベンションでは対応できない、複雑な病変に対して行われます。3本すべての冠動脈に狭窄がある場合や左冠動脈の付け根部分に狭窄がある場合は、インターベンション治療よりもバイパス手術が適していることがあります。最近では、胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS)や、人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス移植術(off-pump CABG)も行われるようになってきました。冠動脈バイパス移植術は全身麻酔が必要で、入院期間は2週間程度です。
狭心症のまとめ
狭心症とは、心臓の冠動脈が狭まって、心筋に必要な酸素や栄養素を供給することができなくなる病気です。
狭心症の主な症状は、胸痛や胸部の圧迫感、息切れなどです。運動やストレスなどで引き起こされることが多く、安静時には症状が軽減します。
狭心症の主な原因は動脈硬化です。血管が年齢や生活習慣、遺伝などの影響で硬くなり、内壁に脂肪やコレステロールが蓄積することによって血管が狭まる状態です。高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が一因となります。
狭心症の治療は、症状の程度や原因によって異なりますが、主な治療法は、薬物療法、カテーテル・インターベンション、冠動脈バイパス移植術などがあります。治療の目的は、症状の改善や合併症(心筋梗塞、心不全)の予防です。生活習慣の改善や適度な運動、禁煙を行うことも重要です。
狭心症についてご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。